[Di]地デジ移行とB-CAS利用に見る家電・放送業界の巨大利権を見る

トップページ> 考察 , 2007年12月18日

「2011年をもってアナログ放送は終了いたします」

最近そんなCMを見かけることが多くなってきた。アナログ放送は2011年をもって終了し、それ以降は全てがデジタル放送に切り替わる。デジタル放送はそれまでのアナログ放送とは見違えるほど画質が良くなり、テレビがもっと楽しくなる…と宣伝している。

では画質が良くなる以外に地デジに切り替わるメリットがあるのか…と考えてみると、実はそこにメリットは画質がよくなるということ以外ほとんど存在しない。むしろ消費者にとってはデメリットとなることばかりだ。その代表格が「B-CAS」と「コピーワンス」である。

地デジの設備が自宅にあるならば、それをくまなく見てほしい。すると受信機(チューナー)には必ず「B-CAS」カードなるものが取り付けられていることを確認できるだろう。日本におけるデジタル放送はすべて暗号化されて配信されており、このB-CASカードはその暗号を復号しテレビに映る形に変える役割を担っている。つまり2011年以降日本のテレビ放送はこの「B-CASカード」なしでは受信不可能となる。ちなみに世界中の国家の中で地上波放送を暗号化して配信するのは日本ただ一国である。

また、もういとつ有名なのが「コピーワンス」だ。これは放送電波に「コピー禁止」の信号を混ぜ、チューナーはこれを感知すると番組の複製を二回以上できなくする、というものである。ハードディスクレコーダーなどでも、HDDからDVDにコンテンツを移し替える作業は「ムーブ」と呼ばれ、コピーではない。こういった仕様はすべて「コピーワンス」による。

ガチガチの「著作権保護」とB-CAS社

「B-CASカード」と「コピーワンス」、この2つを導入することで完全なるコピー対策を施したのが日本の放送業界である。デジタル放送はすべて暗号化されて配信されており、これを復号するには「B-CASカード」が必要だが、B-CAS利用に関するライセンス付与やカードの発行はB-CAS社の審査なしには行われない。そして「コピーワンス信号」を正常に解釈する機材しかこの審査には通らないことから、「コピーワンス信号を無視することで無限にコピーが可能なチューナー」というものが流通しない仕組みとなった。放送波の暗号化とコピーワンスの仕組みはもともと別個のものであるが(げんにNHKの一部の放送は暗号化されずに配信されている)、実質的に両者は許認可権の面では表裏一体となっているのである。

さて、「B-CAS社が認可しないとテレビチューナーはそもそも市場に出せねーんだよ」というこの姿勢は悪質な業界保護である可能性が高い。というか、事実上そうなっている。というのもB-CASの審査基準は一切公表されておらず不透明であるため、国内企業だけを保護している、といったことが考えられないわけではないからである。なおB-CASカードを使った暗号・復号処理の方法はARIBという業界団体が公表しており表面上は誰でもチューナーが開発可能な状態になっているのだが、この仕様書は大変難解であり、これは事実上の非関税障壁ではないかとする意見もある。

そういえば先日、韓国サムスン電子は日本における家電販売から撤退してしまった。多くのメディアは「世界一厳しい目を持つ消費者の選別を受ける日本市場の壁をサムスンは壊すことが出来なかった」などと報道しているが、正直サムスン電子の液晶テレビは「安くて品質も良い」というかつての日本製品の地位を欲しいがままにする、大変コストパフォーマンスの高い製品である。なのに日本市場から撤退した理由は、単に日本における競争が激しいからだけではなく、この「B-CAS」ライセンス問題が障壁となった可能性もある。日本市場のためだけにARIBの作った難解な仕様書を読み、ライセンス料をB-CASに支払い、B-CASの「厳しい」かつ「不透明な」審査を超える…ならばいっそのこと撤退した方が良いのではないか、と考えたのではないだろうか。

我々はこのガチガチな規制をもはや「当然」として受け止めているが、これは全く不自然なことである。それを今から考えていきたい。

電波は誰のものか -民間利権と国民

放送電波は国家の財産である。その証拠として放送事業者はすべて総務省の認可を受けそれを実施しなくてはならない。

しかし今この構図は実質的に変わってしまった。放送電波は確かに総務省が与えるものであるが、実効支配しているのはほかでもない「B-CAS社」となっているのである。放送電波はすべて暗号化されており、これを復号するのはB-CAS社が所有権を持つB-CASカードの役割である(なんとびっくり、B-CASカードは購入者のものではなくB-CAS社のものである)。逆にいえば、B-CAS社は特定の家庭にだけ特別な放送をしたり、あるいは放送を行わないことが可能である。つまり、我々の電波をB-CAS社は思いのままに操ることができるのだ。思想統制をしようと思えばいつでも出来てしまう。

またB-CASカードはユーザー登録しないと有効化されない仕組みとなっていることから、我々の個人情報をも握っていることがわかる。国民の多くがテレビを視聴していることを考えれば、そのデーターベースは大変膨大なものとなる。この個人情報がどこで何のために用いられているのか、B-CAS社は何も公開していない。

さて、ここで「B-CAS社」とは何者なのかを考えてみよう。「社」とつくのだから民間企業であることは容易に想像できるだろうが、ではこの会社と国とのかかわりはあるのだろうか? 放送電波を牛耳る企業なのだから当然あるだろう、と思うのが普通なのだが、じつはこの「B-CAS社」は国とは何の関連もない一民間企業なのである。

つまり日本の放送電波は一民間企業であるB-CAS社に牛耳られているというのが現状なのだ。そもそもこのB-CAS社自体がキー局とメーカーの都合で作られた企業であり、総務省はその設立に関して関与はしているものの主導権を握っているわけではない。国民の知らぬ間に電波はB-CAS社に乗っ取られていたのだ。

また、B-CAS社は膨大な個人情報を操り国家の重要な資産である放送電波をも握っているのにもかかわらずその素性をほとんど公開していない。その情報秘密主義は2006年まで会社所在地をも公表していなかったほどである。また彼らが「B-CASカード」を各メーカーに配布することで手に入る莫大な収入や放送業者から入るライセンス料は現在に至るまで一切明らかにされておらず、彼らの「利権」はいまだに全貌がつかめない状態である。また、B-CAS社には各放送局が資本参画しておりまたその性格が「放送局を守る」というものであるため放送局はB-CAS社に対する批判報道を行わない。公務員の天下りが大変な問題となっているが、B-CASをめぐる放送局自体の莫大な利権は一切報道されることがない。つまりそもそも問題として提起されない。

なお、B-CAS社の筆頭株主は日本放送協会である。そして日本放送協会は国民の支払う受信料収入によって経営されている。我々が半強制的に支払わされた受信料を使用して彼らは私たちの首を絞めているのだ。私たちは私たち自身の首を間接的に絞めている。

そもそも無料放送しかない地上波デジタル放送を暗号化して配信する意味はない。したがって地上波デジタル放送がB-CASカードなしに受信できない現在の体制は不必要であるとしか言いようがない。地デジ視聴のためにB-CAS使用を求められる現在の仕様は完全に彼らの利権保護が目的であるのではないか。

(反響があれば)後半に続く。ワンセグ放送普及に見る「地デジ」の問題点、フリーオの登場などにふれる予定。


投稿者 admin : 2007年12月18日 21:44

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